合気道横浜道場は、故西尾昭二師範が昭和30 年(1955 年)に設立した合気会横浜支部道場を前身とした道場であり、2015 年に創立60 周年を迎えました。西尾師範は講道館柔道、自然流(じねんりゅう)空手を経て、合気道の植芝盛平開祖の直弟子となり、生涯をかけて合気道の普及に尽くして来られました。また、合気道とともに居合、剣・杖、の修行を積み、合気道の捌きを理解するために、特に剣の捌きを基本におきました。
技においては、間とスピードを最も重視し、足捌きも剣の捌きを基本としています。
我々は西尾師範の理念を受け継ぎ、剣の捌きと、触れ合った瞬間に己の形を絶対の形にすること、を重視した稽古を行っています。たとえば、腕をとられても取られた瞬間に必ず相手の中心をとります。取られるのではなく取らせることを、撃たれるのではなく撃たすことを稽古します。これは合気道の妙諦に通じる重要な稽古で、技の動きが武術になるか踊りになるかの分岐点です。相手との体格差があっても、触れ合った瞬間に相手を崩し、勝負をつけることを目指します。
さらに、上級者になるにしたがって、居合と剣・杖の捌きを身につけることを学びます。捌きの基本を身につけると、次はこれらの捌きを合気道の動きに生かすことを工夫します。言い換えると、合気道の動きの基本が居合や剣の捌きにあることを理解して行くことになります。
以上は技(形)の稽古についての紹介ですが、もう一つさらに重要な合気道の心の修行について触れておきます。
合気道では、相手と対立することを嫌います。相手と和し、相手と一体となることを求めます。合気道では、相手を一直線に倒すことはしません。それはできるけれどもやらないのです。触れ合った瞬間に、相手と一体となり、相手と同じ方向を向き、相手とともに動くことを稽古します。相手を導くときも、相手の動きの速さに合わせて半歩先を動きます。一歩では距離が大きすぎて相手がついて来れず、それ以下では捕まってしまうからです。
何事においても、一人で成すことには個人の能力の限界がありますが、相手を自分の仲間に転換できれば力は何倍にも何十倍にも大きくすることができます。合気道の形稽古には現在の我々が最も重要とする和合の心を養う修行が含まれているのです。